私が船を買うまで。第十六話

プレジャーボート

私が船を買うまで。第十六話 ランチョクカモンガ強襲

ロサンゼルスではちょっと欲しいものを手に入れるのにたいへん苦労する。一度、チェロのアイテムを買おうと思ったことがあったが手に入らなかった。ギターセンターなんかは有ることは有るがいわゆる日本の総合楽器店程度。楽譜は置いてない。品数がとても少い。福岡でも楽器店は4~5件有るが、この辺りにはここしかないという。

「にいちゃん。バスプロショップ行ってみる?」
「行く行く!」

弟のすむ町には釣具店が少ないらしい。少し前まで隣町に韓国人バスプロがやっていた店があったがなくなってしまった。マップで調べると数件あるが、釣具を買うときはいつも一時間かけてこれから行くバスプロショップへ行くと言う。ランチョクカモンガという漫画のような地名にあるバスプロショップに行くことにした。
広い。広くて涙が出そうだ。ランチョクカモンガのバスプロショップは同じ店がラスベガス近郊にもあり何度か行ったことがあるがいつきても感動するほど広い。広大な店内は一階が釣り具、二階がハンティング用品にわかれている。ディスプレイも凝っていていろいろな動物のはく製やイケスなどがあり魚が泳いでいて小さな博物館のようだ。

高いものから安いものまで、ルアー釣り用品、フライ用品、衣類、キャンプ用品、ボート、銃、弓矢、とにかくありとあらゆるアウトドア商品が陳列されていて誰でも手にすることができます。

アメリカはとても変わった国で(と書くとアメリカ大好きな人に叱られますが)たいへん遵法精神が旺盛だ。アメリカ人は法で定められたことや宗教上の決まりを(これは個人や地域の宗教の影響にもよりますが)をとても大切にする。だから、法で認められている銃についてもどうどうと陳列されておりだれでも手に取ることができる。よく「アメリカはすぐにでも銃を禁止すべきだ」という意見をいう人がいるがそれはたぶん不可能だ。大多数のアメリカ人は銃を非常に重要なアイテムであると考えている。

銃砲店にはカウンターがあり、カウンターの下にはハンドガン、カウンターのバックにはライフルがズラリと並んでいて小さな店なのに店内はごった返している。カウンターの上に銀行に置いてあるような発券機があり、用事のある人は券を引いて待つ。店内にはハンティング用品、キャンプ用品、釣具などがありそれらを見ながら時間を潰している。

自分の番号が呼ばれたら、250ポンドはあろうかという巨体を少し揺するようにしてにいちゃんのところへイソイソと駆け寄り肩をちょっとすぼめて申し訳なさそうに相談を始める。

「俺のウインチェスターの○○にスコープつけたいんだけどどれがいい?」

その姿はまるで初めて口紅を買いに来た女子高生のようだ。カウンターの中にいるにいちゃんはだいたいギャランドゥーがモシャモシャしててところせましと入れ墨が入っている。にいちゃんは問う。

「目的は?」
「鹿を撃ちに行きたいんだ。」
「それなら…」

と、棚からライフルを取り出して物憂げに説明を始める。おっちゃんは一層前屈みに縮こまりにいちゃんの説明にこくこくしている。横でなんとなくそんなやり取りを見ていると実にほほえましい。旅行者はもちろん購入できないが撃ちに行くことは自由だ。100ドルあればヘドがでるほど撃てる。

アメリカ人の人間性はとてもフランクでとっつきやすく道を歩いていたり、どのレストランに入ろうか迷っていると、レストランの前などで知らない人に話しかけられることがたびたびある。イギリスやドイツでは絶対にありえない。

「ここのレストランはどれ食べてもおいしかったわよ!!」

知らんわ。

そうですねえ。アメリカ人はちょうど大阪のおばちゃんによく似ているかもしれません。ところが、電話で話すと突然横柄になるような気がする。私は、弟がアメリカにわたる前は自分で旅の予約とかほしいものの注文なんかをしていたが電話口のアメリカ人はどちらかというとつっけんどんでこちらのやってほしいことは意地でもしないという心構えでもあるのではないかといぶかしんだものだ。昨日はあると言っていたものが今日はない。え?というと、ないんだからできるまで待てと平気で言う。他を探して期日に間に合わせようなんか全然思ってない。電話するからと言って電話を切っても電話がかかってくることはまずない。この差はいったいどこから来るのかとても不思議だ。

ま、そうはいうもののほとんどのアメリカ人は日本人とおなじ、親切で楽しい人が多いです。まずは腹ごしらえ。このバスプロショップにはレストランがついています。なんと酒も飲めます。軽いものだけですけど。釣り具を見る前に行ってみしょう。

つづく