私が船を買うまで。第六話

プレジャーボート
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私が船を買うまで。第六話  風やまず

「なんね?大声出して。」
「免許がない。」
「え?」
「俺。船の免許持ってなかった。」

「…」

私はこの時ほどなさけない顔をした家内を見たことがない。家内は私の顔をまじまじと見つめた。

「あんたね。私たち何年付き合っとると思うん?35年よ。あんたがいままで船の免許を取ったなんか私聞いたことがないんやけど。なんね。今頃それに気が付いたんね?」
「…うん。」
「あんたねえ。正真正銘のばかやね。」
「舟の免許っち、すぐとれるんやか?」
「さっきもゆうたやん。私、泳げんの。いい?泳げんのよ。」
「うん、知っとるよ。」
「ということは、私は海の事とか川の事とかプールの事とか全然ノータッチの人生を歩んできたんよ。」
「うん。」
「そんな私が船の免許がどれくらいでとれるかとか知っとるわけないやろ!!」
「3か月以内に取れるんやろか?」
「やけ、しらんちゃ。」

家内はあきれ果てた顔でソファに腰かけて大きなため息をついた。

つづく